連載小説
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───この世界に、何の価値がある?───




誰が作ったかはわからない、広いようで狭いこの箱庭。
そこに誰かが木を生やしたり、人を置いたり、一度生やした物を取り除いて新しい物を建てたり、また人を置いたり…。

この世界は、それの繰り返し…ある意味ゲームと似ている。当然、人によってどういう世界にするかは変わってくる……。
……誰だろうなぁ、こんな滅茶苦茶な世界にしたのは…。

好き勝手に破壊して、何の意味があるかわからない建物を建てたり、クズみたいな人ばかりを置いてやがる。自然と人の心を貪るだけのイカれた世界に…それが、今の世界だ。


そんな世界が嫌になった俺、雨谷倫太郎は自分の殻に閉じ籠ってる。要は、部屋に閉じこもってゲームやってる。

リンタロウ「………。」
俺は今、真っ暗な部屋の中で文明が作り出した神秘の箱「パソコン」と向き合ってる。部屋に居るときはいつもパソコンに向き合ってる、もはや相棒通り越して自分の体の一部並みに使ってる。
つい最近発売された、めちゃくちゃ注目を集めてるゲーム【Endless Nightmare】っていうゲームを起動してる最中。RPGらしいがRPGらしからぬダークな雰囲気が特徴で、予約してた人もかなり居たとか。俺も予約してたし、何なら体験版もやって1日でボスを倒してしまった。ていうかこのボス、時に関する能力持ってるくせに使いこなせてなくてめちゃくちゃ弱かったな。
で、ダウンロード版を購入して俺の右腕よりも右腕してるパソコンちゃんでこのゲームを遊ぼうとしてるわけ。まぁ俺左利きだけど。


【この世界でのあなたを作成してください。】

タイトルどころかメーカーロゴが表示されるよりも先に、このメッセージウィンドウが真っ暗な画面に表示される。ロゴよりも先にこういうのが表示されるのは珍しいと思うが、それよりも先にある疑問が浮かぶ。


リンタロウ「…このゲーム、キャラクリ機能あったか?」
そう、このゲームにキャラクリ…キャラクタークリエイションは無いはず。体験版ではもちろん、このゲームのホームページにもそのような情報は無かった。
発売日ギリギリで追加されたのだろうか?いや、このゲームは3Dゲームで画質もかなりいい方。そんな機能をすぐに追加できるはずがない。

リンタロウ「…まぁ、いいや。好きなキャラで遊べるって訳だし。」
この時の俺は、特に気に止めず自分好みのキャラを作り上げていった。今思えば、すごく軽率な行動をとったと思う…一旦ゲームを閉じて、様子を見るべきだと思った。




リンタロウ「よし、こんなモンか。」
数分後、自分好みのキャラクターが完成し画面越しにこちらを見ている。自分好みっていうか、結構自分に似たキャラが出来たな……まぁいいけど。

【このキャラでいいですか?】

というゲームからの問いかけに、、テンプレとも言える「はい」と「いいえ」の選択肢から「はい」を選択する。
メッセージウィンドウも選択肢も消えて、画面が暗転する。恐らくはロードしているんだろうが、大体こういう時って右下辺りにロードしてるであろうアニメーションが出るはずだが、それすらも表示されない。

リンタロウ「おいおい、フリーズか…?つーか今更だけど、企業ロゴすら出てないのにいきなりキャラクリとかおかしくねーか?」

そんなことを誰もいない部屋の中で一人呟くが、相変わらず画面は暗転したまま。もう一度キャラクリするのは面倒だとか思いながら、フリーズだと判断して一度電源を切ることにする。ゲームの電源ボタンに指を添えた時だった



























突然だった。
目の前の画面に何かが表示された……酷くバグってて読みづらかったが…恐らく「WELCOME」って書かれていた。
その文字が消えた途端、急に目の前が真っ暗になった。パニックになるよりも前にわかった、決してゲームの演出とかじゃないこと…そして、これから自分自身に襲いかかるであろう危険な何かを…。








気がつくと俺の視界には、何処かの森が広がっていた。



To be continued

22/10/14 21:46更新 / 青猫

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