連載小説
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【特殊部隊】

















あの戦い………Z市での戦いから、数日が経った。
敵勢力の殲滅並びに、適合実験を始めた根元「ウィリアム・エヴァンス」についての情報を持ち帰ったことを讃えられ、隊長へ昇格し、一つの部隊を任された…。
本来なら、嬉しいことのはずなのに……何故だろう、こんなにも心が晴れないのは…こんなにも、心が痛いのは………。
俯きながら、浮かない顔であるいてるイルゼの肩に、誰かが手を置く。
「や、隊長さん。浮かない顔だね?」
聞き覚えのある声…その声がした方向を向くと、そこにはマスクをした少女がいた。
イルゼ「…ヴィネさん…」
この少女の名前はヴィネ・ハイドリヒ。つい最近、機関に入った悪魔…私が拾ったと言うこともあって、私の部隊へ配属された。

ヴィネ「どうしたの?何か悩み事?」
イルゼの隣を歩き、少し顔を覗きながら尋ねる。
イルゼ「いえ……大したことではないので、大丈夫です。それより、ここでの生活は慣れましたか?」
ヴィネ「んー…まぁ、慣れたかな。でも、一回も出撃はしてないし、これからって感じもあるかなぁ……」
イルゼ「それもそうですね…悪魔の討伐はキツイですよ。悪魔同士でもです」
ヴィネ「う、うん…」


ヴィネ「ところで、どこに行くの?」
ずっと付いて来てるヴィネが、隣のイルゼに、どこへ向かってるのかを問う。
イルゼ「今から、私の特殊部隊に所属する方々に挨拶に行きます。ちょうどいい、あなたも挨拶をしてた方がいいでしょう。」
ヴィネ「それもそうね、どんな人達なんだろ……」
ヴィネは、ここに来て日も浅いから人のことはあまり覚えてない。イルゼは長いが、機関の悪魔と会うのは初めてだ。お互い、どんな人物なのが想像しながら、その場所へと向かう。



















特殊部隊に入る悪魔達がいる部屋の前に着いた、ヴィネとイルゼ。イルゼが軽く扉をノックすると、中から「どうぞ」と言う声が聞こえる。
イルゼ「失礼します。」
イルゼがそう言って扉を開けて、中に入り、ヴィネも続いて入る。
部屋の中には、3人の悪魔がいた。

イルゼ「初めまして、これからあなた方が所属する特殊部隊の隊長を務める、イルゼ・ニコルです。」
ヴィネ「えーっと、その特殊部隊に所属するヴィネ・ハイドリヒです。」
イルゼに続いて、ヴィネも自己紹介する。すると、3人は立ち上がり
「すまない、そちらから出向いてもらって…」
1番手前にいる高身長の少年がそう言って
「紹介が遅れた。俺はロクドウ・イリエ、こっちのぼーっとしてるのがシズマ、ぬいぐるみを抱えてるのがエンジュだ。ちなみに、俺達は兄妹で、俺が長男、シズマが次男、エンジュが長女だ。」
と、自分を含めて他の2人の紹介をするロクドウ。
シズマ「よろしく…」
エンジュ「……」
エンジュはロクドウの後ろに隠れるように移動し

ヴィネ「な、なんだか…ちょっと個性的な人達だね?」
イルゼ「えぇ…というより、私以外悪魔のようですね…」
特殊部隊のメンバーの情報が書かれた紙を読みながらそう言い、「悪魔と組むのは初めてな上、4人も…大丈夫なのだろうか…」などと考えている。
ロクドウ「ところで、その特殊部隊は何をする部隊だ?」
イルゼ以外は、具体的な活動な内容は聞かされてはいない、隊長から説明を聞くようにと指示を受けていた。
イルゼ「えぇ…簡単に言えば、様々な部隊の活動内容をします。悪魔を討伐したり、調査、隠密等…あらゆる活動をします。」
シズマ「大変そう…」
ヴィネ「確かに…5人だけじゃ、難しいんじゃない…?」
イルゼ「確かに大変ですが……この特殊部隊の5人の内、4人は悪魔。それぞれの能力を生かせば、簡単にこなせるはずです。」
それぞれのデータを机の上に広げる。
イルゼ「ロクドウさんと私のレートはS3、ヴィネさん、シズマさん、エンジュさんのレートはS2。私とロクドウさんは、討伐メインで活動します。」
ロクドウ「ふむ…」
イルゼ「エンジュさんは察知能力が優れてます…シズマさんは使用武器と身体能力から、隠密が向いているでしょう。もし行動するなら、2人一緒の方がいいでしょうね。」
シズマ「わかった…。」
エンジュ「………」

ロクドウ「…ん?ヴィネのデータがないぞ?」
机の上にあるデータに、ヴィネのだけがないことに気づくロクドウ。イルゼに、ヴィネのデータと役割は?というように視線を送る。
イルゼ「それは…ヴィネさんは、最近機関に入ったばかりなので、明確なデータは取れてません……なので、戦況に応じて、討伐と調査…どちらをやるかを、指示します。」
ロクドウ「なるほどな…」
ヴィネ「なんかごめんね?」
シズマ「気にしない…気にしない…」

イルゼ「本格的に動くのは、明日からになります。あとは自由時間ですが…よろしければ、お互いのことを知るため、親睦を深めるために時間を使いませんか?」
イルゼが、残り時間の使い方の提案をする。すると
ヴィネ「別にいいよ?」
ロクドウ「あぁ、会ったばかりだからな…それがいいだろう。」
シズマ「賛成…エンジュも賛成?」
エンジュ「……」
エンジュは静かに頷く。

イルゼ「決まりですね…質問ですが、お三方は何故機関に?」
ロクドウ達に尋ねるイルゼ。

ロクドウ「…なに、珍しいことではない。俺達も、こんな体にした奴らを恨んでいる。どうせなら、機関に入ろうと思っただけだ。」
シズマ「…僕とエンジュも、同じ。」
イルゼ「そうでしたか……」
ロクドウ「だが…」
ロクドウが話を続ける。
ロクドウ「俺は、機関の理想などはどうでもいいと思っている。俺はただ、こんな体にした奴らに、地獄を見せたい。ただそれだけだ。」
イルゼ「そ、そうですか……」

シズマ「逆に…隊長とヴィネは…どうして機関に…?」
シズマが、ヴィネとイルゼに同じ質問を聞き返す。イルゼは少し、暗い表情になり
イルゼ「…私は、ある悪魔を倒すために入りました。その人を、ずっと親の仇だと思っていましたが……実際は逆でした。親を守ろうとしていた人でした…その人と共に、Z市での作戦を決行しましたが…その人は、私を庇って死にました…」
シズマ「そうだったんだ…」
イルゼ「だから、決めたんです。その人のためにも、元凶を倒すと…」
ロクドウ「強い意志を持って、ここに入ったのだな……」
死にはしなかったが、ある意味自分たちと同じ境遇なのかもしれない…そう思ったロクドウ。

シズマ「ヴィネは…?」
ヴィネ「私?私もー…シズマ達と似たような感じかな。」
シズマ「そっか……」

エンジュ「……」
エンジュが、ロクドウの裾を軽く引っ張る。
ロクドウ「どうした?」
エンジュが、ロクドウに耳打ちで何かを伝える。耳打ちが終わると、ロクドウはヴィネを見て
ロクドウ「そのマスクは何?だそうだ。俺も気になってはいたが…」
ヴィネ「これ?」
ヴィネがマスクを指差し
ヴィネ「えーっと、これはね……」
イルゼ「顔に傷を負ってるからですよ」
ヴィネ「え?」
ロクドウ「そうだったか…まぁ確かに、女性は顔を気にするからな……」
シズマ「早く…治るといいね…」
ヴィネ「え…えっと…うん…?」







時間が許す限り、5人はお互いのことを話し合った…

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17/09/30 10:13更新 / 青猫
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