連載小説
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【贈り物】








イルゼ「……」

悪魔にも、大切な人がいる……。

あの日、ディーノが言った言葉が、ずっと引っかかっている。
今まで、悪魔は…人間に害ある者、この世から消さなければならない……。
今まで殺してきた悪魔には、そんな人がいたのだろうか?……できれば、いないでほしい。いたとしても、自分が大事…そうであってほしい。
なにか…体の中が重い……何かが直接、中に重さを加えてるような……。

…これが、命の重さ…なのだろうか。
悪魔ではあるが、命を奪ったのは事実……これが、人の命を奪い、背負うことなのだろうか………。


ディーノ「よ、お疲れさん」
考え事をしているイルゼに、話しかけるディーノ。イルゼの隣に座る。
イルゼ「…ディーノ隊長…」

ディーノ「……この間のこと、考えてただろ?」
イルゼ「…よくわかりましたね。」
ディーノ「当たり前だ、何年お前といると思ってるんだ。」
半分笑いながらディーノはそう言う。

ディーノ「…まぁ、なんだ。世の中、あんな感じの悪魔もいる……そんな奴がいたら、見逃せばいい。報告書があるだろ?あれをしっかり読んで、討伐すりゃあいい。あの報告書は、かなり正確だぞ?」
イルゼ「…はい……」
ディーノ「っと、お前宛に何か届いてたぞ?」
ディーノがイルゼに小さな箱を渡す。綺麗にラッピングされていて、プレゼントのように見える……。
イルゼ「…これは?」

隊員「ディーノ隊長。」
隊員がディーノに声をかける。
ディーノ「悪い、話はまた後だ。」
立ち上がって、自分を呼んだ隊員とともに何処かへ行く。


イルゼ「………」
先ほど受け取った箱に目線を落とす。ラッピングを外すと、白い箱が顔を出す。中を開けると……そこには、綺麗な指輪があった。見覚えがある…
イルゼ「これって……私が昔、欲しがってた指輪……」
まだ小さかった頃、自分の母親が指輪をつけてるのを羨ましがって……お店に行って、選んで…誕生日に買ってもらうって、約束してた……
箱の中に、小さく折りたたまれた紙が入っており、それを開く。


イルゼへ

おたんじょうび、おめでとう。
イルゼとやくそくしてたゆびわ、いまごろつけてるかな?できれば、ちょくせつイルゼに渡したかったなぁ。
この手紙をよんでるということは…もう、お母さんはこの世にいないでしょう。前にもやくそくしたけど、お母さんがいる病院には、ぜったい来ちゃダメだよ。
お母さんがいなくても、長く、幸せに……生きてね。

お母さんより


母からの手紙だった……。
だとすると、これはかなり前に用意された物……何故、今これが…?
イルゼ「…まさか…………。」
ずっと引っかかっていたことが……やっと、繋がった気がする…。















ディーノ「…参ったな…」
先ほどの隊員からの話と、資料を見比べてる。
ディーノ「悪魔より、質の悪い奴が動き始めたか……この作戦は、いつ決行するか…」
イルゼ「…ディーノ隊長。」
ディーノがいる部屋に入るイルゼ。
ディーノ「ん?どうした?」
イルゼ「…すみません、近々…休暇をとりたいと思いまして…」
それを聞いて、少し驚いた表情になるディーノ
ディーノ「珍しいな、いつもは休暇なんて必要ないって言ってたのに…でも、丁度いい。次に行う作戦はでかいから、今のうち休暇を取った方がいいかもな。」
イルゼ「作戦…?」
ディーノ「それは、また今度話すよ。休暇のことは、上に伝えとくわ」
イルゼ「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」
ディーノに一礼した後、部屋を後にした。
























イルゼは休暇を取った日…イルゼは、廃墟となった街に来ていた。自分の母親がいた、病院があった街だ……。
イルゼ「……」
私服で来ているが、悪魔を感知するレーダーを持って来ている。だが、対魔武器は持って来ていない……。
レーダーと周りを見ながら、進んで行く……まるで、誰かを探しているように…。

しばらく歩いていると、病院の前に出た。自分の探しているものが、近く感じる。
イルゼ「……」
病院を目の前にして、見上げる……。あの日から、何も変わっていない。目の前には、大穴…その大穴から、中に入る。

中はかなり荒れている…病院だった面影がないくらいに。
廊下を歩き、階段を見つけて登って行く………何かに吸い寄せられるように。

階段を登り切り、屋上へ続く扉を見つける。完全に錆びているが、開かないことはない。錆びたドアノブに手をかけ、回す…錆が擦れ合う感触、開く際に「キーッ」と、高い音が鳴る…。
イルゼ「……」
屋上に何かを見つけ、真っ直ぐその場所へ歩く。
屋上の柵の外側に、見覚えのある後ろ姿があった。
その人が、こちらへ向く。


イヴ「おや、珍しいお客さんだね。」

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17/07/23 15:57更新 / 青猫
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