連載小説
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【幻影】








イヴ「はぁ…はぁ…」
家の中に入り、壁に寄りかかり座ってる…流石は悪魔といったところか、回復が早い…。もう怪我のほとんどが修復してる。
イヴ「…もう、とっくに…人間であることは捨てたはずなのに……自分の体の異常さを見ると…悲しいねぇ…」
薄暗い部屋の中、ポツリと呟いた声が聞こえる…何故だか、その台詞が、その言葉が…悪魔には大きく、重く聞こえた…。

いつからだろう…こんな風に思うようになったのは。
いつからだろう…自分が"悪魔"だと、時々忘れるようになったのは…。

あの場所に行ってもそうだ。いつもあの子のワガママに振り回されたりするけど……そんな日が、楽しいって思うようになっていた。前まで、そんな物は必要ない、イルゼのために…強さだけが欲しいって、思ってたのに…。
あの場所で、あの子と話してると…私も、人間じゃないのかなって…無意識に思う時があった……。施設を出る前、そんなものはとっくに捨てたのに……。

私の願い…イルゼのために死ぬ…そのことを話した時、あの子は「生きて欲しい」って…言ってたっけ…。
死ぬことが願いだったのに…いつからか、「あの子と一緒に生きていたい」って思うようになった…。
矛盾した2つの願い…どうやったら叶えられるんだろう…その方法をずっと考えてるけど、その答えは見つからない…。

イヴ「…どうすりゃいいの……」
こんな、曖昧で…一度決めたことを曲げようとして…未だに悩んで、迷って…














こんな私、嫌いだ…










ふと、視界に何かが映る。
イヴ「…!」
そこにいたのは、見覚えのある人物……あの時、目の前で死んだ…イルゼの母親だ。
驚き目を見開いてるイヴを、悲しそうな顔で見つめている…。

イヴ「…アイラさん…だよね?あの時見たデータに…イルゼと同じファミリーネームの人がいた…多分、その名前があんたの名前だよね…」
ただ悲しそうな顔で見つめているアイラに、そう問いかける。
イヴ「…約束が違うって、怒りに来た?それとも、娘のために…自分の命を落とそうと思わないでって言うの?……それとも」
アイラの顔をじっと見て…口を開く。

イヴ「…もう、自分に嘘を吐くな…それを伝えに来た?」



イヴ「…全部かな………残念だけど、私は悪魔…悪魔ってのは、冷徹で残酷、無慈悲で、人の苦しむ姿を嘲笑う…そんなモンでしょ?」
悲しそうな顔が、更に悲しそうに見えた…
イヴ「…悪いけどさ、今は独りにして……。説教なら、あの世で聞くから……あの世に行ったら、真っ先に地獄に連れてかれそうだけどね……。」
俯いてそう言うと、アイラの幻影は…静かに消えた………。



































あれから、数日が経った。
イルゼは完治しており、討伐の任務に参加していた。
路地裏にて、1人の悪魔と交戦中。

悪魔「はぁ…はぁ……」
イルゼ「………」
深い傷を負ってる悪魔を、無傷で睨んでいるイルゼ。その瞳には…目の前の悪魔なんて映っていない。自分が最も憎んでいる相手…その姿が、目の前の悪魔と被っていた…。

悪魔「…っ…くそぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
叫びながらこちらへ突っ込んでくる悪魔。義眼の力を使わなくても簡単に見切れる攻撃、イルゼは攻撃をかわして悪魔を斬った。
悪魔は倒れ、動かないがまだ息はある…流石の生命力だ。
イルゼ「…これで、終わりです。」
悪魔にトドメを刺そうと、武器を振り下ろす……




















「待って!!」
突如、その声は背後から聞こえた。声が聞こえた方を向くと、そこには1人の女性が立っていた…悪魔を感知するレーダーが反応しないと言うことは、人間だろう。
女性「やめて…その人を…殺さないで…!」
その女性は、目に涙を浮かべ、イルゼにそう言った。イルゼは…驚いた表情に。
イルゼ「何を言っているのですか…悪魔は、人間にとって有害な存在……何故、この悪魔を庇うのですか」
女性「大切な人だから…っ!」
イルゼ「…!」
悪魔が大切な人…?ありえない…
そう思っていると、誰かがイルゼの肩に手を置く。
ディーノ「帰るぞ、その悪魔は殺さなくていい。」
ディーノだ。討伐が終わって、見に来たのだろう
イルゼ「しかし…」
ディーノ「その人の目を見てみろ、あれは嘘ついてる目じゃない。…帰るぞ」
そう言って歩き出したディーノに、女性が頭を下げる。イルゼは、ディーノについて行く。





ディーノ「…不思議か?」
イルゼ「…はい。」
先ほどのことを考えてるのだろうと察したディーノが、問いかける。
ディーノ「あーいうのもあるのさ。人間にも大切な奴はいる…悪魔もそうだ、そういうのがある……覚えておきな。」
イルゼ「…大切な人………」


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17/07/17 09:37更新 / 青猫
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