連載小説
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第9話
鴉天狗との戦闘で傷ついた紅葉を、病院まで運んだ椿と静音。現在紅葉は、集中治療室で治療が行われている。二人は、紅葉の治療が終わるまで集中治療室近くの椅子に座って待っていた。

静音「…ねぇ、椿。何があったの…?紅葉はなんで、あんなにボロボロになっていたの…?」
静音は心配そうな表情で、先ほど聞きそびれたことを椿に聞いた。椿は暗い顔でうつ向いている……そのまま、口を開いて話し始めた。
椿「…見たことのない天狗装束を着た鴉天狗と、戦ってた……それで、紅葉は…」
静音「……そう…………」
椿「…私が、もっと早く行ってれば……こんなことには、ならなかったのかな…」
どうやら椿は、紅葉があぁなってしまったのは自分の責任だと思っているらしい。静音は椿の肩に手をそっと置いた。
静音「そんなことないわ……あなたは悪くない…」
椿「………」
それでもまだ、落ち込んだ表情のままだ。先ほどまで目の色と目付きが違ったように見えたが……いつもと変わらない目をしている。さっきのは、見間違いだったのだろうか
すると、集中治療室の扉が開く。そこから、医者が現れる。

静音「先生、紅葉は…」
医者「大丈夫です、命に別状はありません。今は眠っていますが、あと1週間ほどで完治しますよ。妖怪の回復力は、早いですから」
静音「よかった……」
それを聞いた静音と椿は、安心した。安心したからか、椿の瞼が少し重くなる……
あれ…なんでか、眠いな……紅葉の顔が…見たいけど……すごく眠い……
そのまま椿は、眠りについた…











……

…………


……………


まただ…また、ここに………
椿は、また「白い夢」の中にいた。いつものように、全部が真っ白の空間……何故毎回ここに来るのだろう、夢だとしてもこうも同じ夢を見るのはおかしい。それに…何故かはわからないが、夢ではないような気がする……そう考えていた。

すると、いつものように目の前に黒い点が広がる…また、何かの映像が流れるのだろう。
案の定、それに映像が流れ始めた。一番に映ったのは……花に水をあげている、幽香の姿だった…
まただ…また、あの妖怪がいる…前の夢にも出てきたけど………

視点は幽香にどんどん近づいていき、幽香の背中に手を置いた
椿「ゆ〜か!」
紛れもない、その声は自分自身の声だ…
幽香はこちらを振り返る。
幽香「あら、どうしたの?椿」
椿「えっと、さっきから幽香が水をあげてる花って、なんていう名前かな〜って。」
先ほどから幽香が水をあげている白い花を指差して、幽香に聞いた。幽香は笑みを浮かべて、こう答えた。

幽香「椿の花よ」
椿「私??」
幽香「えぇ、あなたと同じ名前の花…綺麗でしょ?」
椿「うん!」
ニッと笑って、頷いた。

幽香「確か花言葉は…至上の愛らしさ…だったかしら」
椿「しじょーのあいらしさ??かわいいってこと??」
幽香「そういうことよ、この花はこの上なく愛らしい花…椿、あなたと一緒でね」
椿「ほんと?私もかわいい??」
幽香「えぇ、もちろんよ」
笑みを浮かべて、椿の頭を撫でた。
そこから、映像が飛ぶ…幽香と自分が、笑いあって、楽しく過ごしている光景が、次々流れた……そう、まるで……家族同然に………

…………………。






















椿「………」
目が覚めて、ゆっくりと目を開ける……夕焼け空が広がる、病院の窓が目の前にあった。
椿「……………」
椿は黙って立ち上がり、病院から出て行った…
彼女の足取りは重く、暗い顔でうつむいていた。何処か、目的地があって移動しているわけでもない……ただ…歩いていた………。


歩き続けて、夕日がよく見えるところに来ていた……不思議と、懐かしい感じがする。初めて来たはずなのに……
椿は、そこに体操座りした。椿の銀髪が、夕日で薄い日色に見える……
何故だか、あの妖怪………幽香のことを、考えてしまう。知らない人のはずなのに…何であんな夢を見たのか。もしかしたら、幽香とはあの夢の中で見た…家族同然の関係だったのか…わからない。なんだか、胸の中で何かが詰まってるような………











椿「家族じゃないくせに、気安くよっ!!!」





あの時、幽香に言ったこと……幽香の悲しそうな顔…それを思い出した…

椿「……っ…」


そのことを考える程…涙が流れる………
静音「こんなところにいたのね、椿」
後ろから聞き慣れた声が聞こえた。静音の声だ……椿は袖で涙を拭い、静音は椿の隣に座った。
静音「どうしたの、椿…泣いていたみたいだけど……」
椿はうつ向いたまま、ゆっくりと口を開いた
椿「…今日…夢を見たんだ……幽香がいる、夢を……」
静音「………」
静音は黙って話を聞いた。
椿「私を拾って、名前をつけて……私と幽香が、一緒に過ごしてる………まるで、家族みたいだった……もしかしたら、本当に私と幽香は、家族だったのかなって……もしそうだったら…酷いこと、言っちゃったなって……」
静音「………」
そっと椿を抱き寄せた。

静音「大丈夫…全部思い出して、謝ったらいいじゃない…話を聞いてると、本当に椿のことを愛していたのはわかるわ。きっと、許してくれるわ……」
椿「…でも……静音と紅葉は……」
自分がいなくなれば、二人は悲しむかもしれない…そう思った

静音「大丈夫よ…確かに寂しくはなるけど、もう会えなくなるわけでもないでしょ?だから、大丈夫よ」
椿に向けて、微笑んだ。
椿「…うん」
少しだが、笑顔で頷いた。

静音「さぁ、もう戻りましょう?もしかしたら、紅葉が起きてるかもしれないし…」
椿「うん…」
二人は、病院へ戻った。紅葉のことがあるため、治るまでは病院で寝泊まりすることになった。
























その日の夜、椿は眠れなかった…昼に寝てしまったのもあるだろう。
椿「……」
椿は思った……もし、あの夢が自分の無くした記憶なら………一番最初に見た、燃えてる家の夢は…?
そう思っていると…突然、頭の中に映像が流れた…

日色に染まった空の下、涙を流しながらこちらを見ている女性がいた、その女性は、こう言った……


























「………が再び目覚めた時……………辛く残酷な道ではなく、幸せな道を歩むことを…祈っています…!」

椿「!」
椿は立ち上がり、病室から出た。

椿「行かなきゃ…!」
そのまま、病院を出て何処かへ走った……



現在ノ修復率……66%…

つづく
16/06/02 20:39更新 / 青猫
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