連載小説
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第8話












……………

………………………

…あれ………ここって…
気がつくと、辺り一面真っ白な空間にいた…そう、前に来たことがある場所だ。
椿はゆっくりと半身を起こして、周りを見た。

…夢…なのかな……?前も見たけど…今日も同じ夢を見るなんて、変だよね……?
前、この夢を見たことを思い出す。ここには静音も紅葉もいない、椿だけがいる空間だ………

そういえば、前に…目の前から変な映像が現れたんだっけ……じゃあ今回も、出てくるのかな?
そう呟くと、前と同様に目の前の白い空間から、黒い何かが広がっていく…その黒いのから、映像が流れる。その映像は、空が広がっていて視界の下側に黒かった。

空…?やけに遠く感じる…何か小さい物の視点なのかな?この黒いのは…箱?箱の中にいるの…?
その小さな何かは、空をボーッと眺めているだけだ。空には多少雲があるだけで、曇ってはいない。晴れていて、明るい空だ。
だが、その空…というより、周りが黒くなる。影がかかったような…誰かが来たのだろうか?その小さな何かは、その方向を見た。


…!

その小さな何かが見たものを見た椿は、驚いた。が、すぐにそれを睨んだ…























幽香…!!

そこにいたのは、昨日椿を襲った妖怪「風見幽香」がいた。幽香は日傘を差して、こちらをじっと見ている。
幽香「お嬢さん、どうしたの?こんなところで」
と、幽香は恐ろしい笑みを浮かべてそれに話しかけた。
怖…!
椿は普通にビビってます。
幽香は、その何かを両手で抱き上げた。

幽香「…流石に、ほっとくわけにはいかないわね……仕方ない…」
幽香はそれを抱いて、近くの家に向かった。恐らく幽香の家だろう。
少し映像は飛び、目の前に幽香が見えた。視点が少し高い…恐らく抱き上げてるのだろう。

でも、なんであの妖怪が…?この間の夢も変だったけど…

幽香「私が育てていくなら、名前が必要よね……花の名前がいいかしら?」
その何かに名前をつけようとしている幽香。少し考えながら呟いた。
幽香「バラは…変ね。スミレ…も違うし…………」
花の名前を口にするが、ピンと来るものがない様子。だが、何か思い付いたような顔をした。
幽香「決めたわ……今日からあなたの名前は




















椿よ。」

…!!!!















椿は勢いよく体を起こした。朝日がカーテンの隙間から差し込んでいる………時計は、7時を指していた。
椿「なに…今の……!」
信じられないような夢だ。自分を襲った妖怪が…自分の名前をつけたことを。恐らく、自分を育てたのも幽香……本当に椿のことを知ってて、連れ戻そうとしていたのかもしれない…だが、今の椿にはそんなことを考える余裕は無かった。
10分程経って落ち着いたのか、着替えてリビングへ向かった。静音はもう起きていて、朝食の準備をしていた。
椿「おはよ、静音…」
静音「おはよう、椿…あら?元気ないわね?眠れなかったの?」
椿「ううん…ちょっと変な夢を……あれ…?」
周りを見て、紅葉がいないことに気づく。

椿「静音、紅葉は?」
静音「紅葉は…確かジョギングに行くって昨日言ってたわね。いつ出掛けたかはわからないけど…」
昨日のことを思い出すように静音は答えた。椿は、何か嫌な予感がした……はっきりとはわからないが、何故かそういう気分に…
椿「紅葉を探してくる…!」
静音「え?…ちょっと、椿?」
静音の話を聞かずに、そのまま外へ出ていってしまった…




























紅葉「はぁ…はぁ………っ…!」
紅葉は、射命丸と戦っていた。紅葉の体はあちこち怪我を負っており、口からは血を流していた。一方の射命丸は、まったくの無傷で、紅葉とは違い息を切らしていない。

射命丸「意外と頑丈(タフ)ですね。これだけ攻撃を喰らっても、まだ立ち上がって歯向かうとは…」
紅葉「クソ…ありえねー…ッス……!!」
紅葉は再び射命丸に接近し、飛び蹴りを繰り出す。が、射命丸にあっさり弾かれる。

ありえねーッス…体術であちきが負けるなんて…!相手の動きは、素人同然のはず…なのに、何で一発もまともに入らねーッスか…!!
そんなの…そんなの………

紅葉「認めねーッス!!!」
弾かれてもすぐに飛び上がって、射命丸目掛けて拳を振った。
だが、片手で受け止められた…
紅葉「…!」
射命丸「残念ですが…王手(終わり)です。」
そのまま反対の手で、紅葉目掛けて拳を突き出した……
紅葉は死を覚悟して、拳が当たる少し前に…強く目を瞑った………
































射命丸「…!」
射命丸の拳は、紅葉に届く寸前で止まった。いや、正確には………椿が射命丸の手首を掴んで、止めていた。
紅葉は、ゆっくりと目を開けた…左側に、椿の横顔が見えた。
紅葉「あね…ご…………」

椿「………」
椿は、射命丸を睨んだ






射命丸「…っ!?」
その目を見れば、急いで手を振りほどいて離れた。
その目は、自分の知っている椿の目ではない………目の色も変わっていて、あの無邪気で優しい目とは正反対の目…彼女の目からは…





















禍々しい殺意しか、感じられなかった…





あの目と殺意……椿とは、まったく別の者のように感じられる…椿の物ではないと思う…

射命丸「これは…逃げた方が良さそうですね……っ…」
命の危険を感じた射命丸は、紅葉を抱き抱えてこちらをずっと睨んでいる椿から目を離し、急いでその場から離れた。

椿「紅葉…大丈夫…!?」
意識が薄い紅葉に呼び掛ける…そこへ、静音が飛んできた。
静音「やっと見つけたわ…!?」
静音は紅葉を見るなり、二人に近づいた
静音「紅葉…!?どうしたの、この怪我…!?この子に一体何が…!」
椿「…それは後で話すよ。とりあえず、先に病院に連れていこう…」
椿は紅葉を抱いて病院に向かって飛んだ。静音は椿の様子を見て、不思議に思いながら椿を追いかけた…




現在ノ修復率…55%…


つづく
16/05/16 22:51更新 / 青猫
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