連載小説
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魔族という種族がいる。
人間と似ている風貌をしていながら、まったく異なる生態系を築いているものたちのことだ。
彼ら、もしくは彼女らは、いつの時代も人間たちの陰に隠れ、ひっそりと暮らしてきた。
人間たちの住んでいる世界を『表』と呼ぶならば、魔族たちは常にその世界の『裏』を生きているといえる。

悪い気持ちというのを思い浮かべて欲しい。
例えば『嫉妬』、『怠惰』、『嘘』、『傲慢』・・・・・・。
この世の中には人間が生まれたときから存在するそういった『悪い気持ち』がある。
それらがまるで生き物であるかのように世の中に形として現れてしまったものを想像して欲しい。
どのような姿を想像するだろうか?

人間はその長い歴史の中で、そういったものをひとつの呼称を持って認識することになる。
独自の想像に思い描いたものを、ある時は壁に、ある時は本に示すことで、確かに後世にその『悪い気持ち』を伝えていった。

人間はそれを『悪魔』と呼ぶ。
空想上の生き物といわれているにも関わらず、人間は『神』、『天使』といった存在に対を成すものとして、今でも『悪魔』は人に恐れられている。

俺達・・・魔族はそれを狩るものである。
『悪魔』と呼ばれる、人間たちの『悪い気持ち』が形となったものを、人知れずひっそりと葬っているものである。

人間には俺達の存在はわからない。
わかりやすくいうなら幽霊のような存在なのかもしれない。
いるとわかっていても目に見えず、だからこそ確かな証拠はない。

それでも・・・・・・
俺達はここにいる。

これから紡がれるのは今から200年ほど前に起こった魔族同士の戦争である。
当時、300以上いた魔族たちが、たった一回の戦いで壊滅状態になった。

言い忘れていたが、俺達魔族というのは、人間に比べて圧倒的に寿命が長い。
そのために子孫を残す風習があまりなじみなく、全体数が少ない。
魔族一人は人間の1000万人に該当すると思ってもらえればよい。
故に、この戦争は俺達魔族にとって歴史に残るほどの大きなものとなったことは間違いない。

俺はこの戦争の生き残りである。
しかも、戦争の中心にいた魔族であるといっても過言ではない。

俺はその戦争で一人の同族の女を助けられなかったことを今も後悔している。
おそらくこれは一生をもってしてもぬぐいきれることはないだろう。

あの戦争で。
俺が助けたかった女は。
最後に俺を助けるために、命をかけた。

そしてその場にはもう一人。
俺を殺そうとした女がいた。

伝えなければならないと思う。
当時、『魔族最強』と呼ばれた、俺が救いたかった女と。
今、『魔族狩り』と呼ばれている、俺を殺そうとした女のことを。

長くなるだろう。

ゆっくり時間をかけて、執筆していきたいと思う。
今、隣にいてくれる妻に、そして、二人の娘に。

もう二度と、あんな悲劇を起こさないために・・・・・・。



著 ヨハネス・アーデルハイト


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登場人物紹介

・ヨハネス・アーデルハイド(ヨハン)
原始の魔族と呼ばれる、魔族が生まれた初期の時代から生きている古参の魔族。主に風を使った魔力が得意。魔族名はトリ。

・バニラ
ジャックと共に戦争を止めようとヨハンに協力を求める女性。
黒髪に加え、黒を基調としたローブのような服を着ている。

・ジョン・キッド(ジャック)
一人称「僕」。短い金髪の髪に、ワイシャツ、ガーターベルト付きの短パンをはいている。子供の容姿だが、それでも長寿。

・ステラ
魔族最強と呼ばれる原始から存在する魔族。当時魔族の中でとりわけ大きな力を持ったといわれる三大勢力の頂点の内の一人。感情の起伏が乏しいが、少女らしい容姿をしている。その頭には虹色の角が2本生えている。ヨハンと関係があるらしいが…?

・ジン
三大勢力の頂点の内の一人。ジンという名前は魔族名であり、常にその名前を名乗って行動しているため、人間界での名前は誰も知らない。原始の魔族であり、ステラについで二番目の強さをほこるといわれている。

・クロノ・クローバー
三大勢力の頂点の内の一人。C.Cと呼ばれている。ほかの勢力の頂点二人とは異なり、原始の魔族ではない。後から地位をのし上がり、三大勢力と呼ばれるうちの一つのトップにまで上り詰めた。

・白い髪の女
戦争中、何かの事件が起きるときにその渦中にいる謎の女性。
白い電気のような魔力を使う。
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遅れましたが、夜來さんのキャラクターをお借りした、過去のお話です。
この作品にはグロテスクな表現、暴力的な表現が多々含まれるため、そのようなものに嫌悪感をもたれる方は閲覧にご注意ください。

夜來さんへ、オリジナルキャラクターの「黒冴依吹」さんをお借りする許可をいただきありがとうございます。

最後になりますが、閲覧してくださる皆様へ、本当にありがとうございます。
どうか最後までよろしくお願いいたします。

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