24
結局3階のトイレも混んでいた。
僕は仕方なく三階のトイレに並んで、用を足した。
外に出て、リーが待っているであろう場所へ向かったが、リーがいない。どこにいるのかしばらく歩いて付近を回ったが、見当たらなかったので、チャットで居場所を聞こうとしたところ、通知が入っていることに気が付く。それはリーからのチャットで、「めんどくさい奴から絡まれてる」「早く来て」「お店の隣の路地裏」と三件連続で書かれていた。
急いでその場所に向かうと、そこには二人の男ともう一人、誰かが横たわっていた。不穏な空気だ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
男が何かを言い、手をあげようとしていた。横たわっているのは女の子っぽかった。しかも見覚えのあるゴスロリだ。
(……もしかして…………!)
僕はギリギリのところで男の腕を掴み上げる。間一髪だった。
「あ……?誰だてめぇ……」
男が振り返り、僕を睨みつける。体格は僕より一回り大きかったので、凄味はあったが、僕はそんなことより目の前の光景に戦慄した。
ジャッキーが倒れている。おぼろげな瞳でこちらを見上げていた。
「……ふぇ………るでぃ……?」
一瞬、僕は何が起こったかわからなかった。気が付くと、僕の目の前で男が倒れていた。右手の拳が痛む。衝動的に男を殴っていた。
「………ぐぁ……いてぇなあおい!!殺すぞ!!」
男が起き上がってこようとするのを僕は顔面を踏みつけることで抑える。言葉にできない感情が僕の胸の内でぐらぐらと煮えたぎっていた。
「………僕の台詞だよ……殺す」
奥にいたもう一人の男が僕に襲い掛かる。右手にはナイフが握られていた。
「死ねええええ!!!」
そのナイフが僕に届くことはなかった。僕の背後から人が現れ、その人が男のナイフを躱し、みぞおちに拳を入れる。
銀髪の長髪の女。ジャッキーだ。
「かはっ……!」
ナイフを持った男は項垂れ、その場に倒れこむ。
「よくわかんないけど…この人たち誰?」
「僕もわかんない」
「うおっ、何だこの修羅場……てかリーじゃねえか!おいおいおいおい大丈夫か??お前鼻から血ぃ噴き出してるぞ!!」
ジャッキーとマルセルが到着したみたいだった。マルセルはリーの元へ駆け寄り、体を起こした。
「くそっ…!覚えてろよ………!」
僕の足元にいた男は僕が足をどかした隙に、もう片方の男を肩に担いでその場を離脱した。いかにも雑魚キャラって感じだった。
「リー……大丈夫?」
「………うまく…はなせないけど……まあ…」
「何があったんだよ……?」
「……なんぱ、されて………つよめに……ことわったら……このしまつ…」
うわぁ…といった感じの表情をみんな揃って浮かべていた。
「とりあえず通報するか」
マルセルが携帯を取り出そうとしたところを、リーが止める。
「……いい…せっかく……ここ来たのに………いまから……じじょうちょうしゅう………とか……わたしは……いや……ぶふっ」
リーは鼻血を出しながら言う。ジャッキーとマルセルは顔を見合わせ、声をあげて笑った。
「ははは!見た目ヤバそうだから心配したけど全然元気そうじゃねえか!」
「リーらしくて安心したよ……いったん車に戻って処置したら、またお店回ろっか!」
マルセルはリーをお姫様抱っこして、そのまま表に出た。ジャッキーもそれに追随する。僕は、周りに散らかっていたリーが買っていたものを拾い、駆け足で三人を追いかけた。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
駐車場に戻り、ジャッキーがリーの応急処置を車の中でしていたので、僕とマルセルは少し離れたところで二人を待った。
「リーがあそこまで不覚を取るとはな……意外だ」
「そうだね……」
組み手でもわかっているが、リーはかなりの実力者だと思っていた。実際そうだろう。相手二人は、その手のプロだったのだろうか。
「あ〜……それか、リーの奴、律義に規則を守っただけって説もあるな。」
「規則?」
聞きなれない単語だったので、僕はマルセルに問う。マルセルは少しびっくりした顔をした。
「あれ……もしかして契約書的なの書いてない?」
「書いてない………」
「………ボス……」
「………」
ボス……僕に契約書か何かわからないけど見せてくれ。というか前にもこういうことあったよな。
「まあ、僕の場合はイレギュラーな配属だったから書かなかったのかも。組織に入るか死ぬか、って感じだったし」
「あ〜〜〜……まあそうか。一応な、そこに書いてあるのが、一般市民への暴力は原則禁止って書いてあるんだ。たとえ正当防衛だろうとな。」
「正当防衛でも、か。かなり厳しいね」
「そう。まあ原則だから生命の危険が及んだらとか、場合によるだろうが、あいつはギリギリまで守ってたのかもな。」
そうこう話しているうちに、二人が車から出てきた。リーは鼻にガーゼを当てて、テープで止められた状態で出てきた。なんか面白い。
それに、服も着替えたみたいだ。先ほどの買い物で買った服だ。おしゃれだからこそ、ガーゼと相まってかなり面白い絵面になっている。
「ははははははははははっ!なんだそのガーゼ!!漫画の中でしか見たことねえぞ!!」
マルセルが爆笑するのを見て、リーは睨む。
「うるさい……こめかみ潰すぞ」
「ひ〜〜〜こえぇ〜〜〜」
「とりあえず車の中に乗ってた応急処置キットで大体は治ってるけど、まだ完璧に治ったわけじゃないからね……歩いてるとき急に鼻血が噴き出して服が汚れるのは嫌でしょう?我慢してね、リー」
リーは少し不満そうだが、ありがとう、とジャッキーにお礼をいった。
「よし!じゃあまたランチバーク散策に戻ろう!とりあえずお昼を食べたいなぁ〜!!」
スマホの時計をみると、もう一時を回っていた。確かにそろそろ昼食をとるべきだろう。
僕たち四人は、事前に決めていたレストランの方へ向かった。
デパートビルの最上階のメニューがめっちゃ高そうなレストラン。僕たちはそこで昼食を食べることになっていた。エレベーターを出るや否や、ウエイターが待ち構えており、席まで案内してくれる。メニューを一人ひとり手渡してくれた。
僕は黙ってメニューを開く。金額は、やはり凄まじかった。メニューほぼ全部万単位ってえぐくないか……。
「じゃあ……私はリーと一緒にアフタヌーンティーセットにしよう!いい?」
ジャッキーがリーに尋ねると、リーは頷いて答える。
「俺は……この『シェフのおまかせランチコース』にしよう」
「お〜いいねぇ!フェルディは?」
え、なんでみんなそんなに決めるの速いの。どうしよう……。
「あ〜〜〜……えーと……じゃあ、僕もマルセルと同じやつにしようかな……」
「よし、決まったね」
ジャッキーは卓上ベルをちりんと一振り鳴らした。ウエイターが注文を取りに来る。ジャッキーが僕たちのものをすべて注文してくれた。
メニューを見ても何の料理か全くわからなかったので、とりあえずマルセルのものと同じにしたけど………不安だ。
てかドレスコードとか色々ありそうだけど、よかったのかな。
「そんな緊張すんなよ……確かにいい店だけど、あくまでデパートだぜ?ほら周り見ろよ、わりとみんな普通の服着てるだろ?」
マルセルが僕の様子を見かねて声をかける。辺りを見渡すと、確かにそこまでフォーマルな感じの服装の人はいなかった。
「そっか〜フェルディはレストランも初めて?初めてばっかりでいいね〜楽しいでしょ?」
「そうだね……行く先々が新鮮だよ」
正直緊張で胃がはちきれそうだが、本当の感想は黙っておく。
僕たちはその後来た料理を食べながら、おしゃべりを楽しんだ。
僕は仕方なく三階のトイレに並んで、用を足した。
外に出て、リーが待っているであろう場所へ向かったが、リーがいない。どこにいるのかしばらく歩いて付近を回ったが、見当たらなかったので、チャットで居場所を聞こうとしたところ、通知が入っていることに気が付く。それはリーからのチャットで、「めんどくさい奴から絡まれてる」「早く来て」「お店の隣の路地裏」と三件連続で書かれていた。
急いでその場所に向かうと、そこには二人の男ともう一人、誰かが横たわっていた。不穏な空気だ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
男が何かを言い、手をあげようとしていた。横たわっているのは女の子っぽかった。しかも見覚えのあるゴスロリだ。
(……もしかして…………!)
僕はギリギリのところで男の腕を掴み上げる。間一髪だった。
「あ……?誰だてめぇ……」
男が振り返り、僕を睨みつける。体格は僕より一回り大きかったので、凄味はあったが、僕はそんなことより目の前の光景に戦慄した。
ジャッキーが倒れている。おぼろげな瞳でこちらを見上げていた。
「……ふぇ………るでぃ……?」
一瞬、僕は何が起こったかわからなかった。気が付くと、僕の目の前で男が倒れていた。右手の拳が痛む。衝動的に男を殴っていた。
「………ぐぁ……いてぇなあおい!!殺すぞ!!」
男が起き上がってこようとするのを僕は顔面を踏みつけることで抑える。言葉にできない感情が僕の胸の内でぐらぐらと煮えたぎっていた。
「………僕の台詞だよ……殺す」
奥にいたもう一人の男が僕に襲い掛かる。右手にはナイフが握られていた。
「死ねええええ!!!」
そのナイフが僕に届くことはなかった。僕の背後から人が現れ、その人が男のナイフを躱し、みぞおちに拳を入れる。
銀髪の長髪の女。ジャッキーだ。
「かはっ……!」
ナイフを持った男は項垂れ、その場に倒れこむ。
「よくわかんないけど…この人たち誰?」
「僕もわかんない」
「うおっ、何だこの修羅場……てかリーじゃねえか!おいおいおいおい大丈夫か??お前鼻から血ぃ噴き出してるぞ!!」
ジャッキーとマルセルが到着したみたいだった。マルセルはリーの元へ駆け寄り、体を起こした。
「くそっ…!覚えてろよ………!」
僕の足元にいた男は僕が足をどかした隙に、もう片方の男を肩に担いでその場を離脱した。いかにも雑魚キャラって感じだった。
「リー……大丈夫?」
「………うまく…はなせないけど……まあ…」
「何があったんだよ……?」
「……なんぱ、されて………つよめに……ことわったら……このしまつ…」
うわぁ…といった感じの表情をみんな揃って浮かべていた。
「とりあえず通報するか」
マルセルが携帯を取り出そうとしたところを、リーが止める。
「……いい…せっかく……ここ来たのに………いまから……じじょうちょうしゅう………とか……わたしは……いや……ぶふっ」
リーは鼻血を出しながら言う。ジャッキーとマルセルは顔を見合わせ、声をあげて笑った。
「ははは!見た目ヤバそうだから心配したけど全然元気そうじゃねえか!」
「リーらしくて安心したよ……いったん車に戻って処置したら、またお店回ろっか!」
マルセルはリーをお姫様抱っこして、そのまま表に出た。ジャッキーもそれに追随する。僕は、周りに散らかっていたリーが買っていたものを拾い、駆け足で三人を追いかけた。
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駐車場に戻り、ジャッキーがリーの応急処置を車の中でしていたので、僕とマルセルは少し離れたところで二人を待った。
「リーがあそこまで不覚を取るとはな……意外だ」
「そうだね……」
組み手でもわかっているが、リーはかなりの実力者だと思っていた。実際そうだろう。相手二人は、その手のプロだったのだろうか。
「あ〜……それか、リーの奴、律義に規則を守っただけって説もあるな。」
「規則?」
聞きなれない単語だったので、僕はマルセルに問う。マルセルは少しびっくりした顔をした。
「あれ……もしかして契約書的なの書いてない?」
「書いてない………」
「………ボス……」
「………」
ボス……僕に契約書か何かわからないけど見せてくれ。というか前にもこういうことあったよな。
「まあ、僕の場合はイレギュラーな配属だったから書かなかったのかも。組織に入るか死ぬか、って感じだったし」
「あ〜〜〜……まあそうか。一応な、そこに書いてあるのが、一般市民への暴力は原則禁止って書いてあるんだ。たとえ正当防衛だろうとな。」
「正当防衛でも、か。かなり厳しいね」
「そう。まあ原則だから生命の危険が及んだらとか、場合によるだろうが、あいつはギリギリまで守ってたのかもな。」
そうこう話しているうちに、二人が車から出てきた。リーは鼻にガーゼを当てて、テープで止められた状態で出てきた。なんか面白い。
それに、服も着替えたみたいだ。先ほどの買い物で買った服だ。おしゃれだからこそ、ガーゼと相まってかなり面白い絵面になっている。
「ははははははははははっ!なんだそのガーゼ!!漫画の中でしか見たことねえぞ!!」
マルセルが爆笑するのを見て、リーは睨む。
「うるさい……こめかみ潰すぞ」
「ひ〜〜〜こえぇ〜〜〜」
「とりあえず車の中に乗ってた応急処置キットで大体は治ってるけど、まだ完璧に治ったわけじゃないからね……歩いてるとき急に鼻血が噴き出して服が汚れるのは嫌でしょう?我慢してね、リー」
リーは少し不満そうだが、ありがとう、とジャッキーにお礼をいった。
「よし!じゃあまたランチバーク散策に戻ろう!とりあえずお昼を食べたいなぁ〜!!」
スマホの時計をみると、もう一時を回っていた。確かにそろそろ昼食をとるべきだろう。
僕たち四人は、事前に決めていたレストランの方へ向かった。
デパートビルの最上階のメニューがめっちゃ高そうなレストラン。僕たちはそこで昼食を食べることになっていた。エレベーターを出るや否や、ウエイターが待ち構えており、席まで案内してくれる。メニューを一人ひとり手渡してくれた。
僕は黙ってメニューを開く。金額は、やはり凄まじかった。メニューほぼ全部万単位ってえぐくないか……。
「じゃあ……私はリーと一緒にアフタヌーンティーセットにしよう!いい?」
ジャッキーがリーに尋ねると、リーは頷いて答える。
「俺は……この『シェフのおまかせランチコース』にしよう」
「お〜いいねぇ!フェルディは?」
え、なんでみんなそんなに決めるの速いの。どうしよう……。
「あ〜〜〜……えーと……じゃあ、僕もマルセルと同じやつにしようかな……」
「よし、決まったね」
ジャッキーは卓上ベルをちりんと一振り鳴らした。ウエイターが注文を取りに来る。ジャッキーが僕たちのものをすべて注文してくれた。
メニューを見ても何の料理か全くわからなかったので、とりあえずマルセルのものと同じにしたけど………不安だ。
てかドレスコードとか色々ありそうだけど、よかったのかな。
「そんな緊張すんなよ……確かにいい店だけど、あくまでデパートだぜ?ほら周り見ろよ、わりとみんな普通の服着てるだろ?」
マルセルが僕の様子を見かねて声をかける。辺りを見渡すと、確かにそこまでフォーマルな感じの服装の人はいなかった。
「そっか〜フェルディはレストランも初めて?初めてばっかりでいいね〜楽しいでしょ?」
「そうだね……行く先々が新鮮だよ」
正直緊張で胃がはちきれそうだが、本当の感想は黙っておく。
僕たちはその後来た料理を食べながら、おしゃべりを楽しんだ。
21/10/06 22:44更新 / Catll> (らゐる)