23
続いて訪れたのは、リーが行きたいといったアニメグッズ、ゲームの専門店みたいだ。
移動中、リーにこそっと「変態」と言われたのがショックで僕はいまだに立ち直れていない。更衣室前での僕とマルセルの会話は筒抜けだったみたいだ。
「よし。じゃあ、行ってくる。」
これまでにない真剣な顔もちで、入り口前で別れを告げるリーを、僕たち三人は「え?どゆこと?」みたいな感じで見送った。
人混みをかき分けて進むリーを見て、ジャッキーは「……リーを一人にするのも何だし…二手に分かれよう」と提案した。
ジャン負けがリーのお守り。ほか二人はこの店を回るもよし、別の店に行くのも良し、という話になった。じゃんけんの結果は、僕が負けて二人が勝つという結果になった。
「じゃ、そういうことでよろしく!」とフェルディとマルセルはすぐにこの店を出た。二人はこういうのには興味がないみたいだった。
僕は割と漫画が好きだということがうちの図書室を使っていてわかったので、リーを探しながら一階の漫画コーナーを物色した。
こうやって見ると、うちの図書室は本当に品ぞろえがいいんだな、としみじみ感じる。並べられていた本のうち、大体はタイトルを見たことのある本ばかりだった。
しばらくコーナーを回っていると、リーの姿を見かける。リーはかごを引っ提げて僕の方にか気づかずに並べられている本に夢中になっていた。
「何見てるの?」
後ろから声をかけると、リーがびくっと肩を震わせた。振り向いて僕だと確認すると、強張った顔が緩み、肩が落ちた。
「……なんだ、フェルディか…びっくりした………驚かせないで…」
「ごめんごめん……で、何を見てるの」
「私の集めてる新刊。これ面白いからおすすめ」
そう言って手に取ったのは……「魔法少女!マジカル☆みるくちゃん」と書かれた見たことのない本だ。ううむ……おすすめするんだから読んではみたいけど、何かと手にするのが憚られるタイトルだなぁ……ジャッキーにまた何か言われそうだ。
「……よかったら貸すよ?」
「え?いいの?」
「うん、ファンが増えるのは嬉しいことだし。確かに題名が題名だから男の子はちょっと手に取りにくそうなタイトルだしね……まあ女でも少し恥ずかしいけど、私は慣れた」
リーってたくましいんだな、という感想は心の中にしまっておく。沈黙は金だ。
「それにしても……たくさん買うんだね。」
リーの持つかごには既に20冊ほど本が入っていた。そんなに読めるのか、と疑問になってしまう。
「本を3冊買うごとに特典のしおりが1個ついてくるみたい。全部で7個。だから21冊は買う」
リーのど根性精神には度肝を抜かれた。
僕たちの給料はめちゃくちゃ多くて、しかも食費光熱費とかはかからないから確かに散在しても困らないくらいには余裕があるけど……それにしても、だ。
「ま、こんなもんだね。レジにいってくる」
リーはたくさんの本と一緒にレジへ並んだ。
続いて2階。2階にはいろんなグッズが置いてあった。
「おお……」
エレベーターを出た目の前には、「とびだせ!チャッピーちゃん!!」のグッズたちが置かれていた。ぬいぐるみ、クリアファイル、キーホルダー、スマホケースなどなど、バラエティに富んでいる。
リーは無言でそのコーナーに近づくやいなや、その場にあった全長30センチほどのチャッピーちゃんのぬいぐるみと対峙した。
「…………8000か……」
8000!?高くね!?!?え?ぬいぐるみってそんなにしたっけ???
僕は戸惑ったが、リーは少し考える仕草を見せ、そのぬいぐるみを手に取った。
「え!?買うの!?!?」
思わず声が出てしまった。リーは呆れたようにため息をつく。
「あのね……こういうグッズはね、欲しいから買うの。値段とかそれは二の次。ここで別れたらもう一生出会えないかもしれないから」
そんな当たり前だろ?みたいな感じで言われても全然知りませんでしたが……
「まあ、フェルディもそのうちわかる日が来るよ」
リーは構わず、他のものも見始める。
「フェルディは何か買わないの?」
「僕は……どうしよう。こういうの初めての経験だからなあ……。」
「まあ最初の方は、グッズって高くてなかなか手が出しにくい気持ちもわかるけど。う〜ん……このラバストとかどう?600円でそこそこ手が出しやすいと思うけど」
そう言って、リーは僕に小さな手のひらサイズの小箱を渡してきた。全6種類 2種類シークレットがあるみたいだ。猫のポンチョを着たチャッピーちゃんや機関車を被ったチャッピーちゃんなど、なかなかチャッピーちゃんの衣装のベクトルが豊富だ。少しシュールではあるが、チャッピーちゃんの可愛さを引き立てるいいラバストかもしれない。
「可愛くはあるな」
「そう!かわいい!!この『亀チャッピーちゃん』とか最高じゃない??亀チャッピーちゃんのぬいぐるみ欲しいなあ……」
リーは小箱の裏側に描かれていたラバストのイメージを見ながらうっとりとつぶやく。
リーはチャッピーちゃんが本当に好きなんだなぁと、そう感じた。
結局僕はチャッピーちゃんのラバストを買うことになった。まあかわいいのでよしとしよう。
一方のリーは新しいかごが一杯になるまでいろんなグッズを放り込んでいた。一体いくらするんだろうか……。
「よし、私はだいたい買いたいものがそろった。フェルディのほしいものがもうないならそろそろレジに並ぼう。」
リーはそう言ってレジへ並ぶ。レジの列は長蛇になっており、僕とリーは最後尾に並んだ。
「そういえば僕、お金とか持ってないんだけど…」
「あ、知らなかったの?スマホで電子決済ができるから、それを使うといいよ。ほら、このアプリ。給料がそのまま振り込まれてて、ビルの一階のATMで換金もできるよ。」
僕はリーに言われる通りに電子決済用のアプリを開く。残高を確認すると、そこには900万の残高だと表示されていた。
それにしても900万って。一ヶ月豪遊してもなくならなさそうな額だな……
しばらく並んでいると、僕たちの番が回ってきたので、レジ端末の案内に従って会計を済ませた。もう少し何か買ってもいいかな、とか今更思う自分がいた。
会計を済ませた後、僕は尿意をもよおしたので、リーにトイレに行ってくることを伝えた。店前で集合ということになったので、僕はお店のトイレに向かいながらジャッキーとマルセルにも連絡をする。
トイレは各階に設置されているが、一、二階ともに並んでいたので、仕方なく三階のトイレを拝借することにする。三階にはCDやDVDなどが販売されていた。ふと、あるコーナーに目が留まる。チャッピーちゃんはどうやらアニメ化まで果たしているらしく、サントラやOP、EDまで存在している。
「チャッピーちゃん、そんなに人気なのか………」
僕はぼやきながら、トイレへと向かった。
移動中、リーにこそっと「変態」と言われたのがショックで僕はいまだに立ち直れていない。更衣室前での僕とマルセルの会話は筒抜けだったみたいだ。
「よし。じゃあ、行ってくる。」
これまでにない真剣な顔もちで、入り口前で別れを告げるリーを、僕たち三人は「え?どゆこと?」みたいな感じで見送った。
人混みをかき分けて進むリーを見て、ジャッキーは「……リーを一人にするのも何だし…二手に分かれよう」と提案した。
ジャン負けがリーのお守り。ほか二人はこの店を回るもよし、別の店に行くのも良し、という話になった。じゃんけんの結果は、僕が負けて二人が勝つという結果になった。
「じゃ、そういうことでよろしく!」とフェルディとマルセルはすぐにこの店を出た。二人はこういうのには興味がないみたいだった。
僕は割と漫画が好きだということがうちの図書室を使っていてわかったので、リーを探しながら一階の漫画コーナーを物色した。
こうやって見ると、うちの図書室は本当に品ぞろえがいいんだな、としみじみ感じる。並べられていた本のうち、大体はタイトルを見たことのある本ばかりだった。
しばらくコーナーを回っていると、リーの姿を見かける。リーはかごを引っ提げて僕の方にか気づかずに並べられている本に夢中になっていた。
「何見てるの?」
後ろから声をかけると、リーがびくっと肩を震わせた。振り向いて僕だと確認すると、強張った顔が緩み、肩が落ちた。
「……なんだ、フェルディか…びっくりした………驚かせないで…」
「ごめんごめん……で、何を見てるの」
「私の集めてる新刊。これ面白いからおすすめ」
そう言って手に取ったのは……「魔法少女!マジカル☆みるくちゃん」と書かれた見たことのない本だ。ううむ……おすすめするんだから読んではみたいけど、何かと手にするのが憚られるタイトルだなぁ……ジャッキーにまた何か言われそうだ。
「……よかったら貸すよ?」
「え?いいの?」
「うん、ファンが増えるのは嬉しいことだし。確かに題名が題名だから男の子はちょっと手に取りにくそうなタイトルだしね……まあ女でも少し恥ずかしいけど、私は慣れた」
リーってたくましいんだな、という感想は心の中にしまっておく。沈黙は金だ。
「それにしても……たくさん買うんだね。」
リーの持つかごには既に20冊ほど本が入っていた。そんなに読めるのか、と疑問になってしまう。
「本を3冊買うごとに特典のしおりが1個ついてくるみたい。全部で7個。だから21冊は買う」
リーのど根性精神には度肝を抜かれた。
僕たちの給料はめちゃくちゃ多くて、しかも食費光熱費とかはかからないから確かに散在しても困らないくらいには余裕があるけど……それにしても、だ。
「ま、こんなもんだね。レジにいってくる」
リーはたくさんの本と一緒にレジへ並んだ。
続いて2階。2階にはいろんなグッズが置いてあった。
「おお……」
エレベーターを出た目の前には、「とびだせ!チャッピーちゃん!!」のグッズたちが置かれていた。ぬいぐるみ、クリアファイル、キーホルダー、スマホケースなどなど、バラエティに富んでいる。
リーは無言でそのコーナーに近づくやいなや、その場にあった全長30センチほどのチャッピーちゃんのぬいぐるみと対峙した。
「…………8000か……」
8000!?高くね!?!?え?ぬいぐるみってそんなにしたっけ???
僕は戸惑ったが、リーは少し考える仕草を見せ、そのぬいぐるみを手に取った。
「え!?買うの!?!?」
思わず声が出てしまった。リーは呆れたようにため息をつく。
「あのね……こういうグッズはね、欲しいから買うの。値段とかそれは二の次。ここで別れたらもう一生出会えないかもしれないから」
そんな当たり前だろ?みたいな感じで言われても全然知りませんでしたが……
「まあ、フェルディもそのうちわかる日が来るよ」
リーは構わず、他のものも見始める。
「フェルディは何か買わないの?」
「僕は……どうしよう。こういうの初めての経験だからなあ……。」
「まあ最初の方は、グッズって高くてなかなか手が出しにくい気持ちもわかるけど。う〜ん……このラバストとかどう?600円でそこそこ手が出しやすいと思うけど」
そう言って、リーは僕に小さな手のひらサイズの小箱を渡してきた。全6種類 2種類シークレットがあるみたいだ。猫のポンチョを着たチャッピーちゃんや機関車を被ったチャッピーちゃんなど、なかなかチャッピーちゃんの衣装のベクトルが豊富だ。少しシュールではあるが、チャッピーちゃんの可愛さを引き立てるいいラバストかもしれない。
「可愛くはあるな」
「そう!かわいい!!この『亀チャッピーちゃん』とか最高じゃない??亀チャッピーちゃんのぬいぐるみ欲しいなあ……」
リーは小箱の裏側に描かれていたラバストのイメージを見ながらうっとりとつぶやく。
リーはチャッピーちゃんが本当に好きなんだなぁと、そう感じた。
結局僕はチャッピーちゃんのラバストを買うことになった。まあかわいいのでよしとしよう。
一方のリーは新しいかごが一杯になるまでいろんなグッズを放り込んでいた。一体いくらするんだろうか……。
「よし、私はだいたい買いたいものがそろった。フェルディのほしいものがもうないならそろそろレジに並ぼう。」
リーはそう言ってレジへ並ぶ。レジの列は長蛇になっており、僕とリーは最後尾に並んだ。
「そういえば僕、お金とか持ってないんだけど…」
「あ、知らなかったの?スマホで電子決済ができるから、それを使うといいよ。ほら、このアプリ。給料がそのまま振り込まれてて、ビルの一階のATMで換金もできるよ。」
僕はリーに言われる通りに電子決済用のアプリを開く。残高を確認すると、そこには900万の残高だと表示されていた。
それにしても900万って。一ヶ月豪遊してもなくならなさそうな額だな……
しばらく並んでいると、僕たちの番が回ってきたので、レジ端末の案内に従って会計を済ませた。もう少し何か買ってもいいかな、とか今更思う自分がいた。
会計を済ませた後、僕は尿意をもよおしたので、リーにトイレに行ってくることを伝えた。店前で集合ということになったので、僕はお店のトイレに向かいながらジャッキーとマルセルにも連絡をする。
トイレは各階に設置されているが、一、二階ともに並んでいたので、仕方なく三階のトイレを拝借することにする。三階にはCDやDVDなどが販売されていた。ふと、あるコーナーに目が留まる。チャッピーちゃんはどうやらアニメ化まで果たしているらしく、サントラやOP、EDまで存在している。
「チャッピーちゃん、そんなに人気なのか………」
僕はぼやきながら、トイレへと向かった。
21/10/03 23:29更新 / Catll> (らゐる)