怠惰の書1
あるところに、アリスと呼ばれる可愛らしい少女がいました。
ある日のことです、懐中時計を抱えて急いでる様子で走っている白ウサギを見かけました。何を急いでいるの?どこへ行くの?何で時計を抱えてるの?そんな疑問が浮かぶ前に、彼女は白ウサギに興味を示し、追いかけました。
白ウサギが森の茂みに入って行くのを見て、アリスも白ウサギの跡を追います。ただただ白ウサギを追いかけて、周りの様子が変わっていくことには、全く気づいておりません。
白ウサギが、とある家に入り、テーブルの上に置いてある薬を飲んでいます。すると、なんということでしょう。薬を飲んだ白ウサギは、みるみる小さくなっていくではありませんか!
アリスはその光景に驚き、小さくなった白ウサギが部屋の隅の小さな穴に入っていくのを見ます。アリスも同じようにテーブルの上の薬を飲み、小さくなります。周りの物が大きく見えるのに新鮮味を覚えた後、部屋の隅の穴へ入って行きました。
穴を抜けた先に見えた物は…まるで、迷路のような広いお庭。遠くにお城見えています。そのお庭に、体がトランプの兵隊が巡回しているのが見えます。
「やぁ、見ない顔だね?」
どこかから声が聞こえました。周りを見回しても、誰もいません。
「ここだよ、ここ」
庭の塀の上に、紫色の猫がこちらを見ています。
「あなたは誰、だって?ボクはチェシャ猫さ、ボクはどこにでもいて、どこにもいない存在。」
アリスは、チェシャ猫の言ったことがよくわかっていないようです。
「ふふ、正しい反応だよ。ボクはそういう奴だからね、ここには変わった奴らが………」
チェシャ猫が何かを喋っている途中でやめてしまい、じっとアリスの顔を見ている。そんなチェシャ猫を不思議そうに見つめているアリス。チェシャ猫は口を開き
「……8961番目の君…かわいそうに…これも"運命"、か。」
そう言い残して、チェシャ猫は消えてしまいました。アリスは、チェシャ猫の言ったことがよくわからないままでした。
そうしていると、お庭にいた兵隊達が、急いで城の方へと戻って行きます。何があったのかと思い、アリスも城の方へと向かいました。
城に到着し、奥の方から誰かの怒鳴り声が聞こえてきます。アリスはその声の方まで行き、そっとその部屋の入り口から部屋の中を見てみます。
「ない!私が作ったタルトが、どこにもない!」
真っ赤なドレスに王冠をつけた女性が、周りの兵隊達に怒鳴りながらタルトを探しています。どうやら、誰かに盗まれてしまったみたいです。
「すぐに探し出せ!私のタルトを盗んだ犯人の、首をはねろ!」
兵隊達の半分がキッチンから出て、残りの半分はキッチン内を探します。
「…ん?」
その女性が、アリスに気づきます。
「なんだい、あんたは…見ない顔だね。もしかして、あんたが私のタルトを盗んだのかい?」
疑われてしまったアリス。アリスは必死に、否定します。
「怪しい…怪しいね……」
兵隊達も、集まってきます。
「コイツが犯人だ!私のタルトをどこへ隠した!」
アリスは否定をしており、持ってないとも言います…ですが、信じてもらえません。
「まさか…食べたんじゃないだろうねぇ!!ええい、コイツの首を…いや………
コイツをバラバラにしておやり!!」
結局信じてもらえず、アリスは兵隊達に、バラバラにされてしまったとさ。
めでたし めでたし
18/03/21 01:17更新 / 青猫