連載小説
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【やっと戻れる】









ディーノ「大分減って来たな………だが妙だ、援軍も無しにただやられているのは……」
他の討伐部隊の声も、聞こえる…圧倒的にこちらが勝っているのだろう。だが、援軍もなくやられてるだけなのはおかしいことに気づき、何か裏があるのではないかと考えるディーノ。
考えていると、イルゼがこちらへ走って来ているのが見える。

ディーノ「イルゼ!よかった、無事だったんだな!長く見かけなかったから、心配したぞ!」
イルゼ「はぁ…はぁ……隊長…い、イヴさんが……」
ディーノ「イヴさんが…?なんだかよくわからんが、まずは息を整えろ…」
イルゼ「は、はい……!」

息を整えてから、ディーノに全て話した。このZ市に、自分達が追っていた存在がいることを。その者の力のこと、今現在イヴと交戦中のことも話す。イヴのことは、今は詳しくは話さず「私達の味方」とだけ話した。






ディーノ「双混体…そんな恐ろしい物を、奴らが作ってたとはな……ともかく、イヴ・グレモリーが今食い止めてるところか…」
イルゼ「はい…早くしないと、イヴさんが…!」
相当焦っている様子のイルゼ。こんなイルゼを見るのは初めてだ…普段感情的になることは滅多にない上…今まで仇と言っていた存在のために、ここまで動くのだから。
ディーノ「よし、わかった。今から戦える奴らを集めながら、その場所に向かうぞ!」
イルゼ「はい!」
2人が、イヴが戦っている場所へ走り出す






























ウィリアム「その必要はない。」
突如、どこからかウィリアムの声が聞こえた。どこにいるのか探そうとした時……上から何かが降って来て、地面に落ちる。
イルゼ「…!!」
地面に落ちた物を見た時……イルゼは目を見開いた。地面に落ちた物が……ボロボロになったイヴだったから…。
ウィリアム「私を楽しませてくれた時間は、7分程度か。まだまだ力を持っているようだが…非常に残念だ。ここで、殺しておくのは惜しい存在だった…」
瓦礫の上から、イヴを見下ろしている。まるで、醜いものを見ているようだった……。

イルゼ「…っ!!」
対魔武器を起動し、ウィリアムに向かって飛ぶ。
ディーノ「イルゼ!!」
イルゼ「うあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ウィリアム「そうか、今度は君が相手か。」
甲核を左手に纏わせ、攻撃を防ぐ。ウィリアムの腕は微動だにしない……
ウィリアム「ふむ、君のその手…それに、足と目も。なるほど、そういう風にA-Virusを体に投与する手もあったか。一体、誰にしてもらったんだい?」
イルゼ「黙れっ!!よくも…よくも、イヴさんを……!!」
イルゼは、涙を流していた…流れるはずのない左目からも、流れていた……。

ウィリアム「問答は無理…となると、持って帰るという手があるな…悪いが、私達の研究に協力してもらおう。」
ウィリアムが、右手に甲核を纏わせようとした時…誰かに、腕を掴まれる。誰が掴んだを、見ずにイルゼを見ている。
ウィリアム「…その生命力は、驚かされたね…」














イヴ「その子に…触るな…っ……!!」
イヴがウィリアムを睨み、腕を掴んでいた…。
イルゼ「イヴさん…っ…!」
ウィリアムがイルゼを弾き飛ばし、イヴとの交戦を再開する。
ディーノ「イルゼ!」
弾き飛ばされたイルゼにディーノが近づき、上半身を支える。2人とも、イヴの戦いを見てる……。
加勢したいが…動けない。あれは、自分達が知ってる次元の戦いではない……。

ウィリアム「先程の戦いで、わかっただろう?君では、私に勝つことはできない。」
イヴ「…っ…どうかな……!!」
闇炎を纏った剣と尾核を駆使して、対抗する……だが、ウィリアムの方が力の使い方が上手い……。


なんで…さっきの戦いもそうだ……これだけ打ち込んでるのに…一発も当たらない……!まるで、空気に向かって攻撃してるみたい……一体、何の差があるの…何が違うの……!!


ウィリアム「どうしたんだい?君の力は、それだけではないだろう?」
イヴ「…っ……!」


…これだけは使いたくなかったけど……もう、手段は選んでられない…!!」


イヴは剣に、闇炎ではなく瘴気が纏う。
ウィリアム「ほう…瘴気を持っていたか。本来の悪魔なら、体内から崩壊するところだが…何故それを維持できたか、興味深い…」
イヴは構えて、ウィリアムの方へ走り出す。
イヴ「いくら光と闇の力を持っていても、これをくらったら、ただじゃ済まない!!」

イヴの剣が、もう少しでウィリアムに届く……瘴気が当たりさえすれば、ダメージは入る……
だが、その前に……一瞬で白い刃で腹部を切られる。一瞬のことだった…体が、斬られたことに気づくのが、遅かった……

ウィリアム「当たらなければ、意味はないだろう?」
斬られた腹部から、血を吹き出してそのまま倒れるイヴ。
その時、ウィリアムの背後から対魔武器で突き刺される…
ウィリアム「ん?」
後ろを向くと…イルゼがいた。対魔武器を持つ手は、震えていた……
ウィリアム「やれやれ、一撃貰ってしまったね。」
向きを変えて、刺さった対魔武器を引き抜く。
ウィリアム「今度こそ、君が相手かい?楽しませておくれ…」
そう言って、イルゼに対魔武器を振り下ろした………























イルゼ「……?」
強く目を瞑っていたが…一向に斬られない。何が起きたのか、目を開けて確認する…


イルゼ「……!!」

























イヴ「……」
イヴが、イルゼの前に立って、ウィリアムの攻撃を受けていた…
ウィリアム「ふむ、悪魔が人間を守る、か……君には、興味深いことばかりがある……」
対魔武器から手を離し、懐から懐中時計を取り出す。
ウィリアム「少々遊びすぎたか…残念だが、ここまでのようだね。また、生きていれば会おう…」
そう言って、ウィリアムはその場から消えた。
ウィリアムが消えた後、イヴは倒れた…
イルゼ「イヴさん!!」
イヴの体を支え、何度も呼びかける。よく見ると、全身酷い怪我を負っている…立っているのがやっとの状態くらいだ……
イヴは、薄く目を開ける…

イルゼ「イヴさん…!!」
イヴ「……ねぇ……イルゼ………最期に……頼みがある………」
弱々しい声で、イルゼに話しかける…

イヴ「…イルゼ…が……私を…殺した…こと…に……して……」
イルゼ「…!なんで……そんな…!」
イヴ「……あんな奴に…殺されるくらいなら……イルゼ…に……殺された方が…いい……お願い……」
イルゼ「…わかりました………」
イヴは、弱々しく笑みを浮かべて、「ありがとう…」とお礼を言った……


イヴ「……私…は……ずっと……嫌だった……奪って…ばかりの……悪魔(じぶん)が……けど……やっと…なにか…を……のこせた…気がす…る………」
イヴの目から、涙が流れた…



イヴ「…やっと……悪魔じゃない…私に…戻れる……」
イルゼ「…ぁっ……っ…イヴさん…っ……」

死を欲しがっていたのは……死を与え続ける"悪魔"だった……

イヴの手が、イルゼの頬に触れた……

イヴ「……イ…ル………ゼ…………」
そして、その手は……力なく落ちた。イルゼは、イヴを………強く抱きしめた………



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17/09/02 10:27更新 / 青猫
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