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第12話『過去』


とある建物にて、ところどころに包帯を巻いて、ボーッとしてる様子で椅子に座ってるザックがいる。その近くのベッドには……治療されたミミが眠っている
ザック「………」
自分でも、なんでこんな行動をとったか不思議に思うくらいだ。憎み、恨む存在なのに……ミミのあの発言と、あの目……それが気になったから?いや、気になったじゃない………

ザック「……」
近くの大きな鏡を見る。そこには自分が映っていた
……アイツと俺は、似ていた。目とか、恨んでるとか、そこも似てるが…………もっと、違うところが似てるんだと思う。どこだ……?何が似てるんだ…?

するとベッドの方で、声が聞こえた。チラッとそちらを見ると、ミミが苦痛に顔を歪めながら起き上がろうとしていた。

ザック「やっと目が覚めたか、お前」
ザックの声を聞いたミミは、ザックの方を向いて睨んだ



ミミ「ザック…っ!!」
と言って、また起き上がろうとするミ
ミ「いった…!」
ザック「無茶すんな、傷口が開くぞ。その様子なら、明日には少しは動けるように…」
トスッ

ザック「……」
ザックの後頭部に軽くナイフが刺さっている。ミミが投げたものだろう
ミミ「ナイフを投げるくらいなら、この体でもできるよ…!」
ザック「……」
後頭部に刺さっているナイフを抜いて、手に持ったまま振り返る
トスッ

今度は額に軽く刺さる。それも抜いてその二本のナイフをその辺に捨てて、ミミの近くまで来て恐い顔でミミを見下ろす
ザック「隠してるナイフ、全部出せ」
ミミ「もう無いよ」
ザック「嘘つけ、それで俺が後ろを向いたら投げるんだろ」
ミミ「だから、もう無いって。しつこいな」
ザック「…………」
今の発言にイラッときた様子。

コイツ……もう許さん
ザック「出さないなら、俺が無理矢理取り上げる。」
ミミ「え、いや、ちょ…!本当に無いってば!」


〜しばらくお待ちください〜
















ザック「なんだ、本当に無かったんだな。」
ミミ「だから……さっきから言ってるじゃん………」
なんか、悪いことしちまったな……
ザック「悪かった、調べたことは謝る。」
反対側を向いてるミミに謝る。ミミはザックの方を向いて、少し赤くなった顔でこう言った

ミミ「いや!謝っただけじゃすまないよ!」
ザック「お前もさっきナイフ投げてたろ、二本も。それでおあいこだ」
ミミ「くそぅ…目を狙えばよかったぁ…」

少し落ち着いたところで、ミミはザックに話しかける
ミミ「…あんたが助けたんでしょ?あたしのこと」
ザック「…あぁ」
ミミの近くの椅子に座ってるザックが、軽く頷く。

ミミ「なんで…?あんた、盗賊が嫌いなんでしょ?」
なんでか……か。んなこと、こっちが知りたいよ……結局、コイツが気になっただけじゃねーと思うけどな…
ザックは少し間を開けて、口を開いた

ザック「…気が変わったんだよ……」
そう答えた。更に、続けて話す
ザック「お前と戦ってた時……お前の言ってた「傭兵を恨んでる」っていうのと……お前の目………なんか、俺と似てるような気がした…」
ミミ「……」
ザック「なぁ…お前。何で傭兵を恨んでる?何のために、盗賊をやってる…?」
ミミ「……」
ミミはザックから視線を外して、天井を見ていた……

ザック「…俺も話してやる。何のために傭兵やってて、何で盗賊を恨んでるか…」
ミミ「………わかったよ…」
天井を見たまま、自分の過去のことを話し始めた…



その過去は、すごく残酷な過去だった………どこか似てると思ったけど、ここまで似てるとはな……
俺は、このことが気になったから?助けたのか……?

ミミ「さぁ、あたしは話したよ。あんたのも聞かせてよ」
ザック「…あぁ。」















あれは、まだ俺がガキだった頃の話だ。
あの時の俺は、騎士学校に通っていた。俺の両親も騎士だったが、俺が物心つく前に戦場で死んでいる。だから俺は、俺の親と親しい関係だった人に引き取ってもらっている。
正直、その人に騎士学校に通うことは勧められなかった。親と同じことになるかもしれない、そう思ったからだろうな。だけど、俺は通った……正直、どういう理由で通っていたかはわからない。騎士はかっこいいとか、強くなりたいとか、そういうのじゃなかった……ただ、町を歩いてる…あの人を見てから、通いたいと思った。

ザック「…」
学校が終わり、家に向かって歩いているザック。顔にはガーゼ等が貼られていた。だが彼は、特に何か思ってる様子もない顔で歩いていた。

「よ、ザック!」
聞き慣れた声が、自分を呼んだ。その方向を見ると、大剣を背負った男が片手を上げて、ニッと笑ってこちらを見ていた。


ザック「エルド…」
俺はその男…エルドの近くまで歩いていった
エルドは俺が通ってる学校の卒業生、傭兵をやってる。俺が騎士学校に通うきっかけになった人だ。歳は、今の俺より少し年上くらいか……エルドくらいの実力があれば、王都の騎士になれるって聞いたんだけど…エルドは自ら傭兵を選んだ。

エルド「なんだなんだ?また派手にやったのか?」
しゃがんで俺の顔を見る。
ザック「うん」
エルド「多分模擬戦だろうな、勝ったのか?」
ザック「勝ったよ」
エルド「そうかそうか!ザックは強いな!」
ニッと笑って、エルドは俺の頭を撫でた
ザック「…俺なんて、まだまだだよ」
エルド「そうか?まぁでも、このままいけば俺よりも強くなるかもな!」
ザック「そうかな?」
エルド「おう!きっとお前は、強い奴になれるぜ!」
俺の前で親指を立てて笑った

ザック「…ねぇ、エルド。エルドって、強いんだよね?なんで、傭兵をやってるの?」
エルド「ん?んー…そうだなぁ…」
二人椅子に座って話している。エルドは足を組んで、んーと言いながら腕を組んで考えていた

エルド「なんつーのかな…確かに王都の騎士の方がいいのかもしれないな。けどな、あくまで王都の騎士が動くときは、王都に何かあった時だろ?町の人もその時くらいしか助けられんしな……」
ザック「うん……」
エルド「その点、傭兵はどうだ?いろんな人の困ったことが、すぐにわかるだろ?」
手をほどいて、人差し指を立てて説明する
エルド「やっぱよ、こういう力は人のために使いたいんだよな。それが俺の、信じる道かな」
ザック「信じる道…」
エルドがこんなに強い理由が、なんとなくわかった。自分のために戦うんじゃない、人のために戦うからだ。もしかしたらあの時、楽しそうに笑って歩いてるエルドを見て…そういうのがなんとなくわかって、俺は騎士学校に通ったんだろうか…「この人みたいになりたい」って、思ってたんだろうか…

ザック「…俺、決めた。俺も傭兵になる」
エルド「お?お前も傭兵になるのか!」
ザック「俺も、エルドみたいになりたい。エルドの信じる道を歩きたい…きっとそれが、俺の信じた道かもしれないから」
エルド「!…はは、嬉しいこと言ってくれるな!」
笑いながら俺の頭を撫でた

エルド「お前ならなれるぜ、きっと!」
ザック「…ありがとう」

これが、俺が傭兵になるきっかけだ。
そして、もうひとつの目的ができるまで…そう遠くはない…



つづく
16/02/20 11:31更新 / 青猫
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